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人形

人の行き交う道。
そこに可愛くもかっこ良くもなく、
どこか不気味で悪趣味な操り人形が転がっている。
それを拾う一人の人間。
軽く人形を動かし扱いに難を感じなかったのか、
男はそのまま人形を持ち帰った。
その様子をまた別の人間はじっと見ていた。
後日。
その道の端であの人形でショウをする男。
多いとはいえないが人も集まって来ている。
人々が興味を示すのは人形劇そのものではない。
人形の不気味さとそれを笑って動かす男に、だ。
「あの男はどうかしている」と囁きながら人々は立ち去っていく。
すると突然一人の男が前に出た。
そして人形を操る男の手を止めさせる。

2人は知り合いだった。
人形を操る男には過去にもおかしなことをしていた。
人間を人形として扱い自分の思うがままに動くよう器具を取り付け、
今と同じように道端で人形劇をしていた。
声をかけた男はその時に人形にされた人間だった。
最初はよりよいショウを届けるために協力していたはずなのに、
気付けば自分が人形にされていたことに激怒し縁を切ったのだった。
しかしその男もすでに狂い始めていた。
今目の前にある人形に共感していたのだ。

過去の自分のように男に操られる人形を見て哀れみを覚えていた。
「その人形を自由にしてやれ」
人形にされていた男が言う。
「人形を自由に?コレは人間じゃない。
あなたの時には確かに僕はおかしかった。
人間のあなたを自由にすることに賛同した。
今はちゃんとした人形でショウをしている。
何故この人形すら自由にしなければならない?
この人形は操られてこそ自由になれるというのに」
真っ当な返答だった。それでも男は続けた。
「そんなものは自由じゃない。お前の意思で動かされているだけだろう?」
周りにいた人々が先ほどよりもざわつき始めた。
目の前で繰り広げられる展開に
「何を言っているんだ」
「わけのわからないことを・・・」
とクスクス笑う人もいる。
そんな様子に目もくれず、2人は会話を続ける。
「第一それはおまえの人形じゃないだろう?
俺は見た。お前がこの道でその人形を拾う瞬間を」
「だからなんだという?拾わなければこの人形は汚れるばかりだった」
この時男2人は話に、人々はその状況に夢中で、
誰も人形を見ていなかった。
人形は力なく地に落ちていた。
そして2人をじっと見つめていた。
実はこの人形。
生きることに無気力となり、誰かに人形として
使ってもらうことで自分が悩むことなく動くことができる、
拾われなくても死ねると考えて扮装した本当の人間だった。
人形として生きるべきか人間として生きるべきか。
張り裂けそうな心境の中、目の前の会話を見ながら考えていた。
結局一番おかしな思考を持っていたのは目の前の2人ではなくこの人形だった。



比喩の表現はまるで幻覚。
そこにあった本当の事実が見えなくなるほどに埋もれてゆく。
それでもなお人は比喩の中の事実を見つけられるという。
果たしてそれはどこまで通用するというのだろう。

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