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生温い空気。
ゆったり流れる時間。
密かに聞こえる時計の音と風の音。
部屋に響く無機質な機械音と何の変化もなく輝き続ける白い光。
そして思考が微妙に麻痺気味のオレ。
見えるのは・・・あぁオレの足。
何か揺れてる。
貧乏揺すりの親戚？
ベッドに寝ながら？
器用だなぁ。
・・・痛い。
あぁそうか昨日と今日の傷か。
誰にも見えちゃいないけど。
あ、アレいいな。
時計が丁度『へ』の字になってる。
・・・お前哀れだよなぁ。
ひたすら回って回って止まったらまた電池入れられて。
お前小学校の時からいたよなぁ。
まだ回されて。
辛いだろう？
いっそ壊れたくないか？
それともそんな思考を持つのは人だけか？
あぁお前も・・・お前も・・・
別にそんな真っ直ぐな存在でありたかったわけじゃないだろう？
昔のお前ってどんなんだったんだ？
岩か？花か？虫か？
聞きたいなぁお前の話。
きっと平凡だっただろうなぁ。
きっとありのままだっただろうなぁ。
いや？
時には食べられたか？
時には削られたか？
それでもいろんな世界を見てきただろう？
なのに今は日にも風にも当たることもなくなって。
『壊れ』たら棄てられるぜきっと。
『邪魔』になっても棄てられるな多分。
あんたそれを望んだか？
誰かに持ち物と扱われてさ。
入らなくなったら棄てられてさ。
差別がどうとかよく言われたけどさ。
人への差別が悪くてなんでお前らへの差別はいいんだろうな？
あ、いろんな世界を何億年と見てきたからこんなことお前には些細か？
ならより一層話を聞かせてくれよ。
そうだ意見も聞きたいな。
人間をどう思う？
天才？神？それとも空気にすら叶わない無力と無意味な存在？
聞きたいなぁ〜・・・
でもあんたなら「そういう生き物」って言いそうだ。
聞くまでもないかもな。
大体比べちゃいけないよな。
お前とオレの時点で次元が違い過ぎる。
でも知りたいなぁ・・・
って、お前まだ睨んでたのか。
小学校の時からずっと睨んでるよなお前。
いやいや結局お前を作ったのはオレだけど。
あの時どうしたっけ？
そうそう。
お前が壁からはがれるから面白くて面白くてベリバリやったんだったなぁ。
それ以来あんたはそこでその顔。
そういや向こうの部屋の奴も睨んでるんだぜ？
お前知らないだろ？
あっちはなかなか怖くてさ。
お前みたいに太った悪魔みたいな感じにはなってないけど。
あの目つきはたまらないね。
小学校のオレにとっちゃ寝る時の監視者だった。
あ、あっちはオレが作ったんじゃねぇけどな。
怖いといやぁあっちの部屋の昔の・・・通称照明君？
あれは最強だったね。
三つ目がまるで螺旋を描くように降ってくる気がして寒気がずっとしてた。
実際降りて来ちゃうから余計に。
あとあいつ引っ張る部分が鉄でさ。
揺れるとず〜っとカチカチ言ってさ。
うああぁ〜・・・思い出すだけで寒気がする。
あ？どうでもいいか。失敬。
なんか・・・つまらないなぁ。
いやあんたらと比べたらこの退屈さなんて反吐が出るか。
何なら遊ぼうぜ？
ほらほら来いよ。
あ、いい。オレが行くわ。
ちょっともたれるぞ〜。
いやぁやっぱりこの時間がオレ一番好きだわ。