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体にできた傷はいい。
ほっとけば治るし、傷跡が残ってても痛くはないから。
釘が刺さって頭に出来た穴も、水筒で殴られて腕に出来た大きな青あざも、
喧嘩してて色鉛筆でえぐられた腕も、今じゃすっかり治ったから。
でも心の傷はそうはいかない。思い出す度に痛い思いをするんだ。
一言キモいって言われたあの日。先輩の突き指の原因が自分だったとき。
誰も覚えてないような些細なことでもそう。
嘘をついてしまって、その内容に吐き気がする。
自分でも変だと分かる自分のしたことを思い出してうめき声を上げてしまう。
背筋が凍って動けなくなる。自分でも驚くほど体が痙攣する。
何度も何度も思い出して泣き出して止まらなくなる。
何気なく暮らしていて、ふとデジャブのように思い出す自分の馬鹿な行為。
でもその傷がなくなったときの方がもっと怖い。
過ちを繰り返しそうで。だから変わりたくなかった。
昔のことを忘れてしまいそうだから。でもそれは言い訳だった。
変わることは忘れることじゃない。自分の記憶力に自信がないだけ。
変わっていく中で何度でも思い出して苦しんでいればそれでいい。
それに気付いたのはつい最近。
でも自分で傷を付けなくなった気がして、それが今の心配。
既にいろいろ過ちを犯した気がする。