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最奥のからくり


自分が信じていたものから解き放たれ。
鎖が外されたかのような自由の中。
また手探りで世界を感じる。
「じゃあどうすればいいんだ」
「何が正しさなんだ」
戸惑うオレを世界は笑う。
「何もしなくていい。正しいことなんかない」
「あるがままを感じ、あるがままに生きてごらん」
世界には何も通じない。
自分の愚かさや醜さを訴えても。自分が犯した罪を語っても。
世界は微動だにしない。自分が提示した事柄のすべてを許容する。
決して捨てるわけでもなく。かといって反応するわけでもなく。
ただ、オレの言葉にスッと触れて。
「そうだね」と笑う。
それだけだ。

世界はどうしてオレを存在させるのだろう。
世界はどうして世界にオレを置くのだろう。
世界はどうして多くの存在を包むのだろう。
多くの疑問がよぎる。
でも。そんな思考の奥で。
為体の知れない回路が、カタカタと回っているのを感じてる。
気を抜くと、その回路が自分の思考を越えて、支配する。
この感覚を、覚えてる。
遠い昔に感じていた、この感覚を、覚えてる。

自分のやりたいことのために、努力していたあの頃。
こういうものが作りたい。こういうことがしたい。
その気持ちに素直になって、そこから生じた多くの事柄。
時には方法を理解するために本を買った。
時には手探りで手段を探した。
時には人を巻き込んで。
その先で生じた何かに、強い強い思いがあったことを。
オレは覚えてる。
あの頃の感覚だ。
のちに自己中心的と叩き潰した、あの感覚だ。
それが今また、自分の中から溢れ出つつある。

これでいいのだろうか。
このままでいいのだろうか。
オレが必死に考えて来たことすべては無意味だったのだろうか。
いや。違う。
その感覚が、まるでブラックホールのように、
自分が得て来た事柄すべてを呑み込んでいくのを感じる。
昔以上にカタカタと軽快に音を立てているのを感じる。
恐らく世界がオレに組み込んだであろう仕組みが、
自分の中で動いているのを感じる。
思考から得た事柄をエネルギーにして。
自分の奥底の、自分が自分である根源とも言えるものが動作する。
その感覚に溺れ、グッと感じ取っていると。
世界がまた笑う。笑う気配がする。
これでいいのだろうか。
わからない。

少なくとも。
これは人間が求めることじゃない。
平和や正しさを求める人間を敵に回しかねない感覚だ。
オレは理解しなければならない。
オレは人に否定されても何も文句が言えないんだ。

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空を舞うように


楽しい。懐かしい。
自分のために割く時間。この感覚。
嬉しくてたまらない。
心地よくてたまらない。
でも。
必要なこと。大切なこと。
そのことを忘れないようにだけはしたい。

音を刻む。人と話す。
決意して。協力して。
こなして。笑う。
嬉しいことだ。
楽しいことだ。
じゃあどうしてこれではいけないのか。
大切な、大切な、疑問。

呑まれてはいけない。
この欲望にまみれた幸せの中で。
自我を保たなければ。
きっと罪を繰り返すだろう。
強く強く、意識しなければ。

自分には、自分という存在である責任がある。
自由の中、幸福の中で。
自分という存在としてあり続けている。
その代償を払い続けなければ。
そのためにどうすればいいだろう。
考え続けなければ。
じゃあそれは義務か?
違う。
これは、オレの願いだ。

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非日常的な夢


心地いい。
目を瞑れば、自分がどこか遠くへ旅立っている気さえする。
何。
と、問いかけるも、答えは帰って来ない。
ただひたすら穏やかな風を感じる。


今日は、これまた印象的な夢を見た。
大きな大きな見知らぬ学校。6階建てぐらいだった。
その校舎で、何かを探すように歩いていた。
ワクワクするような気持ちで、教室ではない、特殊な部屋をウロウロと。
ちょっとした階段を昇り。
物置とも呼べない小部屋が扉を介して連なる。
時には弧に並んだロッカーの部屋。
ロッカーの中にある隠し通路。
見つかってはいけないのか、人と出会うとドキッとする。

というのも。
移動の最中、どこかから声がしていた。
それはもう、体に直接響いているような声。
その声がどこかへ導いていた。
声にひたすら耳を傾ける。
自分の意志は確かにあったけども、
乗っ取られているといってもいいほどに。
ひたすら従い行動していたように思う。

そんな状態で、とある場所に辿り着く。
人気が少ない長く続く廊下。
そこには見知らぬ女の人がいた。それも、普通ではない人だった。
まるで魂が抜けたような、でも倒れているわけでもない。
ゆらゆら、朦朧と、そこにいる。
自分は怖れもせず、その人に近付いた。
会話という会話をした覚えもない。
ただ、こうすればいい、という答えだけが頭に浮かんで。
それに従っていた。精神レベルで。

と。
自分が何をしたかは分からないが。
女の人の胸の辺りから、ピン球よりも少し大きめの
黒い球体が出て来て、見上げるぐらいの位置に宙に浮かぶ。
そこに何か、鍵のようなものが現れて、その球に差し込まれた。
途端、球は膨らんではじけ、中から霊のようなものが溢れた。
人でも動物でもない、それこそ気配だけの、クラゲの如くユラユラした霊。
途端、その霊が自分の背中辺りから入り込む。
体の中を為体の知れない感覚が巡る。
体が少し浮いた気さえする。
そしてそのまま、その女の人を抱いた。
自分の中に入った霊が、胸の辺りからその女の人の方へ移っていく。
まるで人工呼吸で息を吹き込むかのようだった。
女の人から手を離すと、女の人はゆっくり
目が覚めたかのようにスッと立ち、笑顔でこちらを見る。
「ありがとう」
と言い残し、女の人は立ち去った。

あれはなんだったんだろう。

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枠を越えて


どうあればいい?
何をすればいい?
それは使命じゃない?
うん。そうだね。そうだよ。
オレは何もわかってない。
だから自分で選ぶしかない。
決断を他人に委ねて自分はヘラヘラしてるなんて。
無責任だと言うんでしょう?

自分が自分であればいい、なんていいながら。
いろんなことに巻き込んでさ。
酷いよね。矛盾してるよね。
でもそれは無知な自分に何かを伝えるためで。
それが無ければ自分は何も知らなかったんだ。
といいながら、今だって知らないのだけど。

考えても答えが出ない。選択は誤ってばかり。
きっと正解には永遠に辿り着けない。
正解でないグレーゾーンは不要?
いや、違う。それこそが意味だ。
近付くこと。過程が存在すること。それこそが価値だ。
正解不正解という二値化なんてできない。
だから苦労する。だから悩む。
それでいいんだ。

また違った角度で世界を見よう。
世界は何かを教えてくれるかも知れない。

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原点へ


自分が出した最善の解のために行動しようとする。
でも泣く。泣きつかれる。
ダメ、ダメ、と。
でもこれは最善で。答えで。
だからそうあるべきで。
と説明しても、首を振る。

どうして泣くんだ。最善なのに。
・・・違う。
これは最善なんかじゃない。
悲しませないために。傷付けないために。
導き出したはずの答え。
それが全く機能していないじゃないか。

でも、本当にそうなのか?
目の前で泣いているのは。
オレが悲しませたくなくて、傷付けたくなかった、ソレなのか?
信じない、というのは、ありだ。
それでも。
本当にソレを悲しませないためには、この解じゃ不十分じゃないのか?
と、揺らぐ。

自分の中にある基準が公になって、崩れていく。
自分の中にある絶対や事実、当たり前が、崩れていく。
オレはそれを願ってはいたかもしれない。
でも、それは果たして正しいのだろうか。
基準が壊され、評価できない。
当たり前が壊され、評価できない。
自分が分からなかったそれを、頑張って頑張って理解しようと。
積み上げて来たものが、崩されていく。
自分を無理矢理生かして来た理由が、壊されていく。

そう。
オレには元々、生きている意味も価値も、理由もない。
ただ親が「当たり前」と言うから、無理矢理創った。
自分が理解できていないだけだ、と信じて繕い続けた。
でも。自分の中にある理想が、それを壊そうとする。
元々、オレが死にたいと願ったのも。
そう言えばソレが原因だった。
本来オレはソレ寄りだった。
当たり前なんて壊したくて仕方がなかった。
だから無理矢理。納得した。無理矢理「当たり前」を呑み込んだ。
最初から、オレは死にたかった。

いや、違う。
最初じゃない。もっと最初にはソレがあった。
ソレを傷付け壊し殺した、喜びと悲しみ、感情的なものがあった。
そこから自分を恨んで。
自分をめちゃくちゃにした。
当たり前を呑み込んでも、どこか自分を殺したくて。
死ぬための理由を必死に探した。

・・・。
今更、ソレと向き合うことができるだろうか。
過去、酷い目に遭わせたオレに、そんな権利があるだろうか。
ただ。
ソレと思しきものは、待ってくれている。
今一度、考えたい。
でも、それで「当たり前」からも罪からも逃げられるとは思えない。
背負うべきものが多過ぎる。
それでも背負って、潰れてしまうぐらいが、いいのかもしれない。

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