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心震


言葉が響く。
ビィインと、何かと共鳴するような。
大きな音。
心が震える。
痛い。
目が何かに染まるような感覚。
覆い尽くされる。
違う。
やめろ。
やめてくれ。
オレはこんなものを求めてなんかない。
違う。
違う・・・

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「聞くための耳があり、見るための目があり、感じるための心がある」
「お前にはお前であって欲しいから」
「お前のために」
なんて。
そんな言葉を聞いた気がして。
そこから意識が白濁としていって。
自分の中へと落ちていって。
そこには落ち着いた『自分らしきもの』がいて。
「自分は愛されているのか?」とか。
「少なくともオレは愛してる」とか。
「オレにとっての愛は、受け入れたり受け止めることかな」とか。
そんな会話の後。
『自分らしきもの』が、何かと一緒に笑って。
それで。
それで・・・
オレはまた。
死ぬタイミングを失った。

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願いを


流れる時間は止められず。
心にあるモヤモヤは晴れることを知らず。
馬鹿げたことを幾度となく繰り返して。
それでも生き続け。
尚も変わることなく。
愚かな時を過ごすだけ。
あぁ。
お願いだ。
死にたい。
それだけなんだ。
見栄を張る自分が憎い。
殺してくれよ。
それだけ。
本当にそれだけなんだ。

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謎の夢


変な夢を見た。
貧民街を彷彿とさせる家の中。
荒れた壁。やせ細った草。枯れた空気。人気はほどほど。
そこへ宇宙の彼方からそっと手が差し出され、
その手には宙に浮く球体があった。
球体は紫がかった黒で、オーラを発してる。
手の主が何かをつぶやいていたような気がするけど、
はっきりとは覚えてない。
ただ、その手を離れた球体が、地球の地中深くに潜り込んで。
その後まるで地面から競りあがってくるような威圧感を覚えて。
気が付いたら地が肥えて、空気もよくなって。
どこか活気を感じるような。
そんな様子に変化してた。
あれはなんだったんだろうか。

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久々に深く落ちて


ああ。
自分は。
どうしてかな。
ああ。
下らない。
オレは。
認められたくて生きてるわけじゃない。
でも。
声が聞こえる。
落ち着いた、優しい声。
繋がりを感じさせる。孤独を払拭するように。
ただただ突っぱねているオレの手を払いのけて。
分かっている、大丈夫だ、と。
オレの言動のすべてが怯えであることを知った上で言葉をかける。
心の底から湧き上がるように、オレのすべてを吹き抜けて。
オレがオレたる由縁を一つずつ丁寧に繕って。
自ら傷つけようとするその手ですら包み込んで。
長きに渡り荒立つオレの心を静めていく。
その声に連れられるように、オレの意識が落ちていく。

こんな感覚になったのは久々のように思う。
度々あったが、ここまで深く落ちるような感覚は
最近ではなかったような気がする。
その声の主と対峙する。
オレは相変わらず気に入らなくて、納得もできなくて。
自分の妄想の延長線上でしかないことに嫌悪している。
でも相手はそんなこと気にしない。
「いい加減にしたらどうだ」と言う。
その言葉の意味をオレは分かってる。
理由を失った虚無の否定。
ただただ否定したいだけ。怯えているだけ。
その結果の言動。その結果の自分への評価。
思慮が浅い。そう言いたいんだろう。
が、オレはそのまま言葉を呑めるような状態じゃない。
否定したいから否定する。それだけだ。
声の主がオレの言葉に深く、丁寧に耳を傾けている気配がする。
オレへの理解を深めようとしている様子が伺える。

「お前にとって、お前とはそういうものなのだな」
と、否定とも肯定とも取り難い言葉を発する。
そして、間をおいて、どこか静まり返ったような物言いで、
「お前はどこにもいないのか?」と、問いかけてくる。
オレは即、軽くうなずいた。それが事実だ、と。
それに対し「お前自身はどこにもいたくないのか?」
と問いかけてくる。
ワンテンポ置いて、深くうなずいた。
が、声の主の鋭い気配が突き抜ける。
この感じから察するに、どうせ丸バレなんだろう。
それが『そうするしかない』という諦めであることは。
オレは目を伏せて黙るしかできない。
自分や何かをどうこうしたいと思わないことは事実だ。
その言葉を受けてか、問いかけてくる。
「もし、何かがお前に助けを請うたなら、お前はどうする?」と。
その言葉に、何故か心がざわつく。
『どうすることもできない』という理解を超えて、
『どうにかしたい』という気持ちが湧き出てきて、オレを狂わせる。
その瞬間を狙っていたかのように、
声の主はオレのその気持ちを捉えてしまった。

「お前は願うのだろう?」と。
捉えたオレの気持ちを手に言う。
否定はできない。が、事実には勝てない。
願うだけだ、と返した。
すると、声の主が低く深い声で「違う」と言う。
「お前はその願いのために己を振るうのだろう?」と続ける。
戯言にしか聞こえない。
もしそうだったとしても無意味だ、と返した。
また鋭い気配がする。
「無意味かどうかはお前が決めることではない」と。
違いない。オレはただ無意味であると信じたいだけだ。
そのまましばらく、無言が続いた。

「お前は自分の心と、それに追随する己の言動に怯えている」
相変わらず落ち着いた声でそう言う。
違いない。自分のそんな心さえなければ何も問題はない。
心さえ殺してしまえれば、それですべてが解決する。
そう思った矢先、声の主が迫り、オレの思考を支配する。
「お前を殺すのはこれなのか」と。
オレをねじ伏せようとするオレを、声の主は捕らえて威圧をかけてくる。
が、だからどうと言うこともなく。
死ねばいいじゃないか、と淡々と続ける。
そこで初めて、声の主が荒立つ気配がした。
その気配から、どこか深いロジックを感じた。
世界が世界たる由縁。命が命たる由縁。
存在することの意義。変化することの意義。
そのすべてを否定するような態度を、自分が取っている、と。
そう思うと、どこか安心した。
自分を否定してくれる。自分を殺してくれる。
そんなものがこんなに近くにある。
さあ殺してくれ、と言わんがばかりに、オレは目を伏せた。

が、声の主はそうしてくれなかった。
「お前は優しすぎる」
そう言って、声の主は目の前で燻っていた。
納得できない、というオレの心情を知ってか知らずか、
声の主は続ける。
「お前はすべての敵なのか?」
違う。敵以前の問題だ。オレはどこにもいない。
もしオレが存在するのなら、それはあってはならないものだ。
それだけだ。そう言った。
声の主は間をおいて、静かに「そうか」と言いながら、そっと消えた。
微かに残った気配から、またやってきそうな予感がする。
それこそ、オレを存在させるための架け橋を残すような。
そんな余韻。

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