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思うのです


解決なんかしてない。
相変わらず黒い黒い沼で黒い黒い笑みを浮かべてる。
でも。
それが幸せだと思えるようになってしまえば。
それもアリだと思う。


誰かが自分を苦しめた
自分のせいで誰かが苦しんだ
そんな記憶が恐怖心を呼び起こす
まるで実際あったことのように
脳内でグルグルと映像が流れ出す
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
そうやってまるで恐怖が意志を持ったかのように
自分の思いとは関係なく大きく大きく育っていく
そして
ついに恐怖が命を宿す時がやってくる
その光景が目の前に現れるんだ
悪夢が現実になる
現実という大きな大きな刃で切り裂く
声にならない悲鳴
否定できない存在感
恐怖心はニタリと笑いながら
己を冷たい監獄へ閉じ込める

いつも通りの生活
そこにあの子がいる
自分はあの子にいつも通りに接する

その『いつも通り』が気付かないうちに歪み
その子は心に卵を産み落とす
そして
歪みがもう一度現れた時
その子の心の中で卵が孵る
いつしか『いつも通り』は正常に回らなくなる
その子は恐怖に満ちた顔で
こちらを見ている
あぁ
引き金を引いたのは誰だった?


そんな時
恐怖心に恋をしたらどうなるだろう
恐怖心の本当の姿を見てしまったらどうなるだろう
自分を守るために警鐘を鳴らしてくれていた
誰よりも自分のことを考えていてくれた
誰よりも厳しく誰よりも凛々しい
あぁかもしれない
こうかもしれない
多くの可能性を示してくれた
危ない橋を渡るときも
隅から隅まで見渡して
道を示してくれた
もう二度と繰り返さないように

それでも監獄には違いなかった
恐怖心が自分が見ていた綺麗な光景の
裏に潜む可能性という影を示す
あぁかもしれないからやめておけ
こうかもしれないからやめておけ
歩くことが出来る道は細く細く
止まることも許されず
すでに用意された道を行く
まぁ
逆に言えば選ぶ必要がなく楽なのかもしれない
それに
自分の目に見える世界ではなく
遥か遠くの世界を見つめ示してくれる姿が
愛しくて仕方がない
もっと見せて
もっと見せて

他人から見れば
悪魔に取り憑かれたように見える自分の姿も
自分から見れば
自分のためにやって来てくれた
神を讃え愛する姿でしかない
そして恐怖をも愛し始める
自分の中で黒い命が生まれ落ちる瞬間が
楽しくて仕方なくなってくる
黒い黒い夢が
白い白い夢だけを見ていたころなんかよりも
雄々しく感じてくる


ある日監獄に誰かがやってくる
助けにきたと言う謎の存在
その存在の裏に見える影
今となってははっきり見える黒い影
監獄の中から手を伸ばす
その影に
きょとんとした相手に自分は囁く

貴方が怯えるものは何ですか
貴方はそれを愛していますか
貴方を愛しているその声を
どうして貴方は聞こうとしないのですか
どうして貴方は
白紙になろうとするのですか
どうして私が助けを求めていると思ったのですか
どうして
貴方が私の手によって血に染まるという恐怖を
知らないのですか
何故見知らぬフリをしたのですか
何故愛してあげなかったのですか

悪魔だ
そういってその存在は逃げ出した
我が神はその様子を見て呆れる
お前は私のせいでお前の白すら見失うのか?と
それに対して首を横に振る
白一色の世界も黒一色の世界も見たくない
見るならどっちも見てみたい
信じてるよ
あの人が自分の白も黒も愛してくれること
そうやって笑うと神も笑ってくれる
お前の中に居られて幸せだと
こんなやりとりが出来るようになったのも
黒ばかりを示していた神が白を認めたから
幸せ顔をした神の姿を見て
かわいいなぁ
なんて言おうもんなら
いつものように自分の首が飛んでいった
このツンデレめ

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