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思うことは山ほどある。
その思いを馳せ、思考を巡らせることも多々あった。
でも。それだけではいけない。
今一度、周りを見渡そう。
オレは今、どこにいるのか。
自分ではない何かは、自分に対して何をしようとしているのか。
感じるままに、知ろう。
それを疑わず、受け止めるところから、始めよう。

まず。目を開こう。見えるものは何か。
一面に広がるのは水。果てには水平線。
見上げれば青を知らない空。水にはその空が映り込んでいる。
見下せば己の足。水面にはついていない。
ふわりと、浮いている。
風というには穏やかすぎる何かを感じる。
支える、でも、包む、でもない。
纏う、に近い感覚。
自分の気持ちが揺らげば、それもまた揺らぎ、風のように通り過ぎる。
非常に従順で、でも自分自身ではない。
寄り添い、オレに何かを問うような、そんな感覚。

他に何か感じないだろうか。
・・・。
水面の奥に大きな気配を感じる。
こちらの様子をうかがっているようにも思える。
気配のする方を見つめてみる。
近付いては来ない。でも逃げもしない。
この気配もまた、オレに何かを問いかけている。
なんだ。問いかけが聞こえない。
オレが、聞こうとしていない?
確かに、問われても答えを導き出せる気がしない。
でも。
その問いかけの先には、オレがいる。
オレに、問われている。
自信はない。でも。その問いに、耳を傾けたい。

「世界を愛しているか」
それは、そう。何度否定しようとしても、否定できない。
自分にその資格がないことは重々分かっていても、
好き、というか。思ってしまう。
深く、深く、思ってしまう。
これが愛している、という定義に当てはまる自信は、実のところはない。
でも。愛してしまっているんじゃないか?と問われれば。
はい、としか、言えそうにない。

「生きたいか」
楽しくないわけじゃない。でも、生きたくは、ない。
自分に生きるだけの価値があるとは到底思えない。
生きれば生きるほど、悲しくなる。
・・・あぁ。
単純に、自分が嫌いなんだ。何かをしてしまう自分が。
力を持て余してる、とでも言うんだろうか。
自分にそぐわない、大き過ぎる力が、与えられている、気がする。
オレじゃない。
幸せになりたいのは。力が欲しいのは。
オレじゃない。

「何故、生まれたと思う?」
「何故、力を与えられたと思う?」
「何故、それがお前だと思う?」
・・・分からない。
少なくとも。オレは決して特別じゃない。
オレは人間だ。人間はオレ以外にもいる。
力だって、いろんな人やものに与えられている。
それが、当たり前で。当然の出来事で。
何故、と問われるまでもない、約束された事柄、じゃないのか?

「それでも、お前の命、心、力は、お前だけのものだ」
「お前のためだけに、そこにある」
・・・。
どちらにせよ、そのすべてはオレだけで完結したものだ。
自分ではないすべてのものに関係はない。
確かに、オレにしか成せないことや、
オレがいなければ生まれないものだってあるかもしれない。
でも、そこにはなんの必要性もないし、選択肢があるはずだ。
強制される筋合いもない。

「お前は大切なことを忘れている」

忘れているかどうか、は、知らない。
ただ、モヤモヤする。
気持ちがあふれる、というか、なんというか。
どうしてだか、泣きたくなる。
為体の知れない何かが押し上げて来て、吹き出しそうな、感覚。
なんだろう。

信じたくても信じられない。何かをしたくてもできない。
じゃあ信じたいものってなんだ。したいことってなんだ。
何かに何かを促される。また、微笑む気配がする。
心の奥に手を伸ばされて、グッと何かが引き出されそうな、感覚。
オレは、怯えてる。
引き出されまいと、泣きそうになりながら、抵抗してる。
きっと。愛したい気持ち、だろう。
自分には愛する資格がない。
無知無能であり、自分勝手だからこそ、抵抗するんだろう。
そんな自分を赦されそうになって、足掻いているんだ。
赦して欲しくないから。むしろ殺して欲しいと願っているから。

オレは愛されているか?
いや、それはない。
オレには愛されるだけの資格がない。
怯えだと言われてもいい。一生不幸になっても構わない。
オレに必要なのは愛されることじゃない。
愛することを諦められるだけの絶望だ。
微塵として残さず、この気持ちを失うことができる、絶望だ。
そう、オレはこの気持ちを諦めたいんだ。
馬鹿げた幻想を終わらせたいんだ。

どうして心底絶望を求めても、笑う気配がするのか、分からない。
優しく手が差し伸べられるのか、分からない。
オレは、愛したくなんかない。
そんな資格もない。オレは違う。
知ってる。愛している。でも愛したいわけじゃない。
資格がもし、あると言われても、欲しくない。
愛したいのも、その資格を求めるのも、オレじゃない。
そんな幸せを求めるのは、オレじゃない。
・・・?
オレにとって、それは幸せ?それが生きること?
でも。だからって、いらない。
オレの幸せなんて。ゴミだ。

あぁ。
せめて、教えてくれ。
生きて、幸せになったら、どうなるっていうんだ。
そんなもの、誰が求めてるんだ。
どうして必要なんだ。
納得できない。理解できない。
幸せなんか、なくてもいいじゃないか。

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