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ただ泣く


盛大に泣いた。
泣いてないて泣きまくった。

懐かしい場所だった。
今では家が建ち並ぶ畑、田んぼ。
草むらや、やぶの中の虫。
溝に潜む虫、小魚、オタマジャクシ、貝。
歩かれ続け剥き出しになった黒い土、埋もれた石。
あの頃の感覚に浸りながら、ゆっくり歩く。
何も考えていなかった。
自分のことばかり考えていた、とは思う。
それでも。
受け入れられていた気がしていた。
人の土地、ということで追い出され、
それ以来そこには踏み入れていないのの。
呼ばれた気がして、記憶に浸る。

記憶の中ですら、最早立ち入りたくなかった場所。
自分には立ち入る権利はなく。
楽しい、幸せだと感じているのは自分だけ。
だからダメだ、と。
でも。
悲しかったんだろう?悔しかったんだろう?と。
そう聞こえた気がして。泣いた。
幼心に、二度と来るなと言われたことが悲しかった。
でも人が有する権利に叶うことはない。子どもなら尚更。
かといって、どうこうするつもりもなく、ただ従った。
あの頃、泣きそびれた分が今更やってきたんだろうか。

泣かないとやってられない、なんて思いたくはない。
でも泣いてしまうのなら、ぐちゃぐちゃになるまで泣いてしまった方が。
他に影響を与えなくてすむかもしれない。
昔みたいに動けなくなるようなことにはならないかもしれない。
だったら今のうちに泣いておこう。
そう思う。

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