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もやもやする。気持ち悪い。
何かを、溜め込んでる。
分からない。
そんな自分に問いかける。なんなんだよ、と。
ゆっくりと、言葉を紡いでいく。

やりたいことがある。
そのために頑張ろうと思う。
こうしたい、ああしたい、と願ってる。
でも、これは正しさじゃない。
誰かを傷付けている。誰かの言葉に耳を傾けられていない。
もっと耳を傾けたい。分かってあげたい。
人の言葉を素直に聞こうとしない自分がいる。
嫌だ。嫌だ。

そんなことをブツブツと言う。
ぼーっと聞いている側のオレは、人事のように聞き流す。
またなんか言ってる。何も解決できやしないのに。
言葉だけ連ねてる。馬鹿馬鹿しく思える。
はぁ、とため息をついて距離をおこうとした。
すると。
カツン、と糸が張ったかのように、進めなくなる。
逃げるな。向き合え。と言わんがばかりに。
じゃあどうしろって言うんだ。オレに何をしろって言うんだ。
腹立たしくなって、荒々しく張った糸を引く。
すると自分が逆に引かれ、どこかに落ちた。


少しの間、遠退いていた意識が戻り、
ゆっくり目を開けると、そこには０がいた。
睨まれてる。でも殺気はない。
０は何か言いたげだ。
でも言葉にできないのか、口を少し開けては閉じている。
何を言おうとしているのか知ろうとして、手を伸ばす。
が、手が届く前に０の口から音が漏れた。
それも、言葉じゃない。
泣いているときの、あの息を引くような音。
えっ、と思った瞬間には０は目を閉じて泣いていた。

少し驚いたものの、何となく分かる。
０はオレが理解できない、理解しようとしていない気持ちを
自分自身で表現しようとしている、気がする。
どうしたらいいか少し悩んで、とりあえず軽く抱いてみた。
０もまた軽く抱き返して、淋しい、つらい、と小声で言う。
淋しい？そんなわけがない。
昨日も今日も友人と会えた。それだけでも十分嬉しかった。
つらい？それもおかしい。
疲れたとか面倒だと思いながら、オレは今の生活に満足できてる。
が、そうじゃない、と言わんがばかりに０は黙り込んでしまった。

薄々感づく。
オレか？オレ自身か？
オレが自分の気持ちを突き放すから、
気持ちが「淋しい」だとか「つらい」だとか訴える？
そうかもしれない。
確かにオレの気持ちはいつだって置き去りだ。
事実として成り立った事柄に沿って、
淋しくないだの、つらくないだの、言っているに過ぎない。
本当はどう思っているかなんて、気にも止めないから。
と、考えに耽っていると。
「自分自身を理解する努力もしないくせに他人を理解できるわけがない」
０が突然いつものトーンで話す。
なんせ距離が近いもんだから、背筋が凍った。

しばらく微動だにせず、無言が続いた。
自分自身を理解する努力と言われても、どうしたらいいか分からない。
が。ふと何かが降りてくる。
思うがままに、何かを書くこと。
形にできそうにない気持ちを、形にできないまま吐き出すこと。
とりあえずそうしよう、と思った。
「そう。じゃあ頑張れ」
０はそう言い放つと、オレを突き飛ばし、
オレはまたどこかへ落ちていった。