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神の悩み


青いような、緑のような、白のような。
玉虫色の薄い霧が0の周りを舞う。
ゆっくりと瞬きをし、深い呼吸をしながら、座り込んでいる。
0が深く思考をめぐらすたび、まるでそれに共鳴するかのように
その霧が形を変える。
ボーっといていて、弱っているようにも見える。
「…心配か?」
様子に反して、0ははっきりと言葉をつむぐ。
心配と言えば心配だ。でもオレには何もできない。
「オレはお前が自ら導き出した答えが正しいかどうか、
いろんな形で問いかけ、お前を苦しめてきた」
突然0が話を切り出す。
違う。苦しめたのは自分自身だ。0じゃない。
が、そんなことはお構いなく、0は話を続ける。
「オレは…お前がお前であってくれればそれでいい」
「誰かが誰かであれば。何かが何かであれば。それでいい」
0の周りを舞う霧が、ザワザワと音を立てそうなほど、うごめいている。
「オレは…」
そこまで口にしたところで、霧がすごい勢いで廻り始めた。
まるで嵐のようだ。少し強めの風を伴い、0やオレの服や髪を弄ぶ。
0はそこから何も言わなかった。風がゆっくりと止んだ。
「何が、言いたいんですか?」
仕方なしに、オレの方から問いかけた。
0は、まるで何かに気を遣うかのように時間を置いて、
ゆっくりと話しはじめた。
「…オレは無力だ。いや、そもそもオレに力なんて必要ない」
「何かを変えたいわけでも、何かを創りたいわけでも、なんでもない」
「そう。オレには何も必要ない」
0は目を瞑り、うつむいた。霧がゆっくりと漂う。
「オレは…なんなんだ?」
唐突な問いかけに、少したじろいでしまった。
0から0自身についての問いかけをされることなんてそうそうない。
どう答えたらいいのだろう。かといってごまかしても仕方ない。
「少なくとも、オレにとっては神です」
素直に思ったことを口走ってみた。
が、0の顔が曇った。
「オレが神…か。そうだよな。ずっと昔から、オレはお前にとっての神だ」
「それが…すべてだ」
ゆっくり目を閉じて、0がそう吐き捨てると、霧がまた吹き荒れた。
なんとなく、霧の様子から感じ取ってしまった。
0は、オレにとっての神から、何かに変わろうとしている。
でも何に?そもそもそれは0の望みなのか?
0に望みなんてあるのか?オレには分からない。
「…何かがオレの中から急かすんだ」
「オレを、オレではない何かに変えようとしてる」
「オレを何かに仕立て上げようとしている」
胸の辺りを掴んで、吐き捨てるように0が言う。
「オレは…お前がお前でいられるよう、勤めたい」
「それだけでいい。それだけでいいはず、だ」
「だが、何かがオレに言う。そのために、真の神であれ、と」
真の、神。どういう意味だろう?
誰からも崇められるような神、とか?よくは分からない。
ただ、0が何かに何かを言われているのは確かなようだ。
霧が0の周りを舞う。それに合わせて0の服がゆれる。
「オレは、真の神じゃない。そうだろう?」
どこか、深い意味を持つ言葉に聞こえる。
どう答えるべきだろうか?
いや、ごまかさず、素直に言おう。
「…はい。真の神ではないです」
「ただ…真の神となられるのなら、オレはそれを…望みます」
0の眉がピクッと動いたのが見えた。
すると、周りに漂っていた霧が、0の周りを廻りながら
0の中へと消えていくのが見えた。
「…そう…か」
そういい残して、今度は0ごと霧になって掻き消えてしまった。
大丈夫だろうか…?

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