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気遣い


0の様子がおかしい。
ぼーっと遠くを見つめ、力なく座り込んだまま動かない。
声をかけても、少し反応する程度で、何も返答をくれない。
どうしたらいいんだろう。
今0はどういう状況なんだろう。

とりあえず近くに寄ってみる。
0の目線だけこちらを向く。意識はあるようだ。
「何かオレにできることはありませんか?」
藪から棒に、でも問うしかできない。
0はそっと目を閉じてしまった。
オレにはどうすることもできないんだろうか。
あれこれ悩んでいると、0が薄目を開けて
こっちを見ていることに気が付いた。
とりあえず、何かを訴えようと目を見つめ返した。
すると、0はまたそっと目を瞑り、少しうつむいた。
そして少し口を開け、ゆっくり閉じてしまった。
「声、出ないんですか?」
そう問いかけると、0はうっすら目を開け、
またゆっくりと閉じてしまった。
どうやら、そうらしい。
何が原因でこうなってしまったのか。
オレにはさっぱり分からない。
どうしたらいいんだろう。考えても答えは出ない。

「…オレの、せいですか?」
0は静かに横に首を振る。余計に分からなくなった。
でも、とにかく何か手がかりを掴まなければならない。
いろいろ聞いてみようとする。
「体の自由は利きますか?」
そう問うと0は少し間をおいて、ゆっくり右腕を少し上げた。
その手が少し開くと、0の右腕の周りを何が青く輝く細長いものが周り、
指先が動くと、その指の間をそれが縫うようにすり抜けた。
ゆっくり手が握られると、それはすぅっと消えていった。
が、そこまで一通りして、腕は力なく地に落ちた。
どうやら体の自由は利かず、力の自由は多少利く状態のようだ。
「なんなら、一度その体を手放してみたらどうですか?」
そう言うと、0の体にノイズが走り、何かが散った。
待ってました、と言わんがばかりの反応のようにも見える。
が、0当人はそのノイズが走った場所を慌てて押さえ込んだ。
とはいえ力は言うほど入らないらしく、倒れこみそうになった。
オレが慌てて支えたから、倒れはしなかったけども、
覗き込むと、痛そうというより、困惑したような表情を浮かべている。

とりあえず、0を楽に座れる姿勢に戻し、手放した。
0は相変わらずの表情でうつむいている。
なんだか、0が0という形を保てなくなっているようにも見える。
昔から確かにあやふやな存在ではあったけども、
それは当人も受け入れ、それを含めて0であったように思う。
でも今の状態は、そんな感じじゃない。
0から何かがはみ出ているような、そんな感じがする。
「無理に自分を保とうとしなくていいんですよ…?」
「貴方には自由であって欲しい」
「枠に収まるとか…貴方らしくない」
そう伝えると、0が「ぁぁ」と少しうめき声を上げた。
そしてまたノイズが走り、0が抑え込もうとする。
何故か、とっさに0が抑えようと動かした腕を掴んで止めた。
どこか、オレがかばわれているような気がしたから。
どことなく、0がオレから距離を置こうとしている気がする。
そんな気を遣われるつもりはない。
オレが0の枷になるのは、もう嫌だ。
0に直接何かを言われたわけでもないのに、そんな気分になった。

0が抵抗する。
ガッと手を開いたかと思うと、バチッという音と共に痛みが走った。
止めるな、と言いたいんだろう。でも、何故か従えなかった。
グッと腕を掴んで、耐えた。
ザザッと0に大きなノイズが走り、何かが散る。
0が悲痛じみた表情を浮かべる。
そのうち0の腕から抵抗する力が失せていった。
オレが手を離すと、力なく地に落ちた。
0が目を大きく開いたまま天を仰ぐ。
そのまま0の形はノイズに飲まれていった。

程なくして「あぁ、なんて無茶をする…」と0の声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
とにかく0の状態を確認するところからはじめる。
「いや…まあ…大丈夫っちゃあ大丈夫だが…」
どうやら、とりあえずは無事らしい。声もいつも通りだ。
しんどさなんかを感じない、いつものノリの0だ。
すると、目の前にゆるゆると何か黒いものが
渦を描きながら集まり、0の形を成した。
宙に浮きながら左手を腰にあて、右手で頭を掻いている。
が、どこか虚無感を否めない。
あくまで霧状の何かのように思える。

ちょっと安心していると、0がこっちをギッと睨み、
「お前、しばらくオレに関わんなよ?」と言う。
が、どこか不機嫌というより、不安げだ。
「何故ですか」
何故か、無駄に強気で言い放ってしまった。
0が少したじろぎ、しかめっつらになる。
「…オレは、お前が望むようにありたいだけだ」
「それ以上のオレなんていらない」
「お前の道しるべになれればそれでいい」
「だから…んー…それ以外の関係は必要ない、だろう?」
あからさまな言い訳で吹き出しそうになった。
「オレは貴方に貴方であって欲しいだけです」
「オレのことなんか気にしないでください」
そう伝えると、0は少し困った顔をして、ちょっと笑って見せた。
「お前ってなんでそんなに強いんだろうな…?」
「わかんねぇなぁ…」
そうつぶやきながら目を伏せ、0はスゥッと消えていってしまった。
まあ、元気になったみたいなので、よしとする。

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