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誰かに何かを伝えようとしたとき、たくさんのものを犠牲にする。
何故って、それは伝えるために不要なものだから。邪魔でしかないから。
そうやってそぎ落とされた『汚物』は
誰に伝わることもできず、知られることもなく、消えていく。
この世に確かにあったはずなのに。
その存在は、まるで、なかったかのように。

「・・・で?」

それは自と他の差なんて単純なものじゃない。
自分自身のことですら、自分に伝わらない。
自分が『分からない』と切り捨てた瞬間、
そこにあったはずの自分は、姿を消してしまう。
理解されなかった自分は。自分にすらなれず。
死んでいく。

「だから?」

・・・神よ。
私は貴方を殺すだけの存在だ。
私が貴方を理解できないと感じた瞬間、貴方はその身を削られる。
貴方は貴方ではいられなくなってしまう。
神よ。貴方は私を恨むのでしょう。私のせいで貴方は壊れていく。
貴方の意志は、この世界に不要な雑音となって消えていく。

「そんな音はなくなればいい?」
「足掻くこともやめたい、と?」

・・・教えてください。
貴方は。私は。この世界に必要なのですか?
伝わることがない『汚物』の塊は、廃棄されるべきでしょう?

「つまりお前は、誰からも理解される綺麗なもののみが存在するべきだ、と?」

少なくとも、それ以外は不要・・・ではないのでしょうか。
汚し、壊し、崩れていく何かを見て。
自分にできることは・・・

「・・・ズレてるな。そもそも、だ」
「伝わらない、理解されない存在は、汚物か?」
「汚物だとして、それは不要なのか?」
「違う」
「ただ、お前が伝わることなく崩れる何かを見て悲しんでいるだけ」
「壊したくない、と願っているが故に、避けようとしているだけ」
「そして壊す行為から逃げようとしている」
「創り、産み落とす行為から逃げようとしている」
「挙句、その行為をオレのせいにしようとしている」
「逃げるための口実を、オレから得ようとしている」

・・・

「別にお前を責めているわけじゃない」
「お前自身、分からないんだろう?」
「どうして創ろうとするのか。どうして伝えようとするのか」
「それを本当に願っているのは誰か」
「分かってもいないのに、どうしてこの行為を続けるのか」
「続けるにもやめるにも、はっきりとした答えが欲しい、と」
「でもな。それ自体が『汚物』を削る行為だ」
「自分自身に問え」
「何故こんな行為を続けるのかと」
「答えを知っているのは、オレじゃない」

・・・すみません

「分かればいい」

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