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霞む世界


目に見えるものすべてが創られたものであり特別なものはなく、
いくら主張しようが、どれも存在しては消えていくだけのもので。
昔あれほどまでに尊く儚く、自分という存在ひとつで
すべてが崩壊してしまうと怯えていたはずの光景が。
それ自体がすでに仕組まれている当たり前の流れであり、
ひとつひとつにたかが自分が思いを馳せても、無意味であると。
今はそう思う。

過去の自分が演じてきた物語らしきものは、
どうにもならないものに対して、ただただ幻想を抱き、
泣き喚いていただけだと、つくづく思う。
本当に。本当に。
だからこそ改めて思う。
自分は『死にたい』と望んでいるだけなんだなと。
理屈らしい理屈をどんなに並びたてようが、
全部死ぬためにでっち上げた理由でしかない。
望みを叶えるために取っているくせに
なんの効果もない言動でしかない。
馬鹿さに絶望する。いつものように。

今手元に唯一残っている『死にたい』という理想。
死んでしまえば叶うというのに、
死んでいないのは自分がそうしていないだけ。
言い訳もでっち上げる意味が見出せない。
結局悪いのは自分だ、というだけ。
願いを叶えるため、死ぬための努力をしていないだけ。
ひたすら自分に呆れる。

誰かが言う。
「お前の望みは死ではないだろう」と。
それはそうかもしれない。
死という単純な望みだったらさっさと死んでいるはずだ。
悩むだけの要素が望みに紛れ込んでいる。
だから死んでいない。でもそれだけ。
どれかひとつが叶って、あとは叶わない。
そんな構図が当然だ。
紛れもない純粋な願いなんて、自分の中にない。
で、どれを叶えるか選ぶこともできず、
どれも叶えられないまま人生を終えていく。
あるのはそれだけ。たったそれだけ。

そろそろ。
死というひとつを選んだって。
いいだろ?
なあ。
もう10年は待ったんだしさ。
いいだろ。
なあ。

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