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神の所業

死にたい
怯えだ
分かってる

異次元の自分?
可能性?
分かってる

自分が自分を殺す
自分が自分を生かす
分かってる

頭で考えて出す結論はすでに決着がついてる
それを拒んでいる何かが問題なのだけれど
頭じゃないところから発生している気がする

自分ではない誰かが
自分ではない自分が
出ているはずの結論を否定し覆そうとする

耳を…傾ける
頭を…空っぽにして

友のように寄り添う風を纏いながら見上げる
遠い遠い場所に向かって何かを願い祈り思い馳せている
自分が及ぼす影響を
まるで歌のように
まるで作品のように
一つ一つを心の底から湧き出す願いとして形作る
時に優しく
時に厳しく
時に激しく
時に寂しく
すべてを星のように輝かせ
個々の命に囲まれながらそれは微笑む

ふと我に返り、その光景を一歩引いて眺める
それは、神の行為、そのものじゃないか
つい先ほどまで、すぐそこに自分がいた
なのに自分は、それに違和感を感じていなかった
恐ろしくなる
そしてまた蔑む
オレは無知無力の、人間かどうかすら怪しい、愚か者だ、と

慣れてしまった心の痛みに
いつものように涙しかけた頃
風が傍を過ぎっていった
友のように、と形容したソレが、過ぎっていった
やめてしまうのか、と
今までに聞いたことのない声が聞こえた
重なるように心が痛んだ
重なるように涙した

オレがしてきたことは神の真似事だったんだろう
オレがしてきたことは偽りの命の量産だったんだろう
オレはそのすべてを愚かと評した
だからこそオレは死を願った
この馬鹿げた行為を終わらせるために
オレはオレが創り出してきた偽りの命、偽りの世界を
何もかも終わらせるために願ってきた
その意志に偽りはない
その願いに偽りはない
オレは

自分が創ってきた世界の悲鳴を幾度となく聞きながら
すべてを無意味無価値と呼んで壊し殺していく
世界はオレを恨むだろう
けれどオレはやめない
愚かなオレを殺さないと気がすまない

違う

聞きなれた言葉が聞こえる
それは必死に言葉を続ける

お前が願うからこの世界は生まれた
お前が愛するからこの世界は生きようとした
けれどお前はこの世界を無と呼ぶ
お前ではない世界を有と呼び真と呼ぶ
お前は本当の意味で理解することもできない正しさに
その心を痛めながら染めあげて
お前が愛し育てた世界を
自ら手にかけようとしている
私は知っている
お前のその痛みを
自ら創り出し心から愛したものを斬りつけて
笑うお前の姿を幾度となく見てきた
理解できない有を守ることを選択し
唯一理解できる無を悪や罪として壊し笑う
…お前のために私にできることはないのか
お前を諦めさせるために私は死を選ぶのか
お前の存在そのものを私は否定しなければならないのか
正しさを前にして私にできることは
お前の願いを否定することしかできないのか

どことなく繋がりのない一連の話を聞いて思う
何に必死になっているのだろう?と
オレのため?それになんの意味がある
オレの世界を生かす?無いものを生かしてなんになる
確かにオレは願ってしまったんだろう
だからこんな世界を創ってしまったんだろう
でもだからなんなんだ

やめろ

何かに抱かれ何かが降り注いでくる
心に広がる痛みをじっくりと味わうように感じる
あぁ、幸せだな、と
ふと何故か思った

やめろ

まるで呼び戻すかのように
言葉が続けて落ちてくる
弱々しく切に願うような印象さえ感じる
鈍くなった思考回路で考える
オレが愛している世界とは何だ?
オレではない世界だ
じゃあこの世界はなんだ?
その世界の模写だ
本物を犠牲にして創り出した偽物だ
そしてこの偽物が存在し続ける限り
本物の世界は汚されていく
だからオレは

ふと
強く何かに押し流され感覚を奪われる

私は本当の世界を愛するために創り出された命ではないのか

頭の中で
ゆっくりと
その言葉を
復唱する
意味合いを
履き違えそうになる
……
オレは
世界を愛するためにこんなものを創ってしまったのか
本当の世界を犠牲にしてまで
こんなものを創ってしまったのか
こんなくだらない理想のためにくだらないものを
オレは創ってしまったのか

やめろ
違う
やめろ
どうすればいい
どうすればいい
違う
違う
このままでは
このままでは

熱い
何かがオレを強く抱きしめて泣いている
何かがオレなんかのために何かを祈り願っている
哀れだ
あぁ
オレは本当に
どうしようもないクソだな
そう言い放った頃
別の何かがすぐ傍にふわりとやってくる気配がした

愛することは愚かか

酷く静かに
何かが問いかけてくる
愛することそのものは愚かじゃないかもしれない
でも愛していることを理由に捻じ曲げていいものなんてない
そう答えた

愛されることによって生れ落ち
ゆっくりと歳月を重ね
やがて自我を持ち
その存在もまた何かを愛していくとしてもか?

鈍りきった思考回路で意味を追う
……
愛することがそこまで重要だとは思わない
むしろない方がスムーズなのかもしれない

そう言い放つと
何かが胸の上に手を宛がってくる

ここにある愛はそんなにも邪魔なものか?
世界はそんなにも守らなければならないものなのか?


そもそもここにあるものが愛かどうかも怪しい
それに
オレが守りたいからそうしているだけ
オレという存在から自由になればいいのに

守りたい
それが愛だろう?
世界からお前が消える
それがゆがみだろう?

……
手が宛がわれた胸の奥で何かが脈付く
途端
感覚がよくわからなくなる
自分がよくわからなくなる
まるで染み出すように
宛がわれた手から熱を感じ始める

オレはただ死にたいだけ

零れるように言葉を発した

その愛が命を宿す

降りてくる言葉がただただ浴びるように流れていく
段々と意識が白濁としていく
遠退いていく意識の中
宛がわれていた手がゆっくりと潜り込んでいく感覚を微かに感じる
死にたい
死にたい
この世から自分が消えれさえすればなんだっていい
オレが消えさえすればなんだっていい
オレが勝手に創り出した技術も知識も記憶も世界も
すべて

次なる命を生み出す種になる
お前が愛するものを生み出す種になる
種はいつしか芽吹き新たな愛を育むだろう
それはお前も例外ではない
お前もまた愛されていく
お前は世界に愛されている
お前はお前に愛されている
だからこそ
お前は涙するのだろう?

……分からない
分から、ない

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