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そんな状況


オレの親のスペックは高い。
数学をパズルと言って、趣味は因数分解だという。
パソコンは専門家の中の専門家で、
改造するとなると、ハンダを使うレベルで改造することもできる。
ぶっちゃけそういう方面に対してはクレーマーでもある。
クラシックオタクでもあって、吹奏楽に参加、なんてこともある。
絵を描ける。そして絵にはうるさい。
現実では有り得ない状態の絵を許せないのか?と言いたくなるほど。
形、影、関節、遠近、動き、バランス、色。何から何まで口を挟む。
おまけに服を一からデザインして自分で縫う。

文系理系共にハイスペックな親を持っている子どもはハイブリッドなのか?
いや。難儀なだけだ。
文句を言えば否定しかされない。そして言い返せない。
何をしても褒められない。感心されない。
あったとしても「上手くはなった」とかぐらい。
その後に続く言葉は大抵「でもこれはこうだ」だ。
そして何より、どんなことにもすぐに口を突っ込みたがる。
「やろうか?」とか。「教えようか?」とか。
やってもらったら二度と手を付けられない代物になる。
自分のレベルでは到底届かないから。
教えてもらおうとしたって、レベル差が大きすぎて。
「なんでこんなことも分からないんだ」と言われる。

自分以外の兄妹も似たようなもので。
読書好きで知識豊富。行動力が異様に高い。
意見は問答無用で言う。好き嫌いもはっきり言う。
そして成績優秀。赤点万歳のオレとは大違いだ。
そう。
ぶっちゃけ馬鹿なのはオレだけだ。
親に怒られて。
閉め出しにあったのも。パソコンのハードディスク壊されたのも。
携帯を折られかけてボロボロにされたのも。
そこまで親をブチギレさせたのは。オレだけだ。

それでもそこには常識があって。
守るべきルールがあって。
それに従うことが、生きる理由に近い。
オレを生んだのは親だ。オレを欲しがったのは親だ。
親がいらないと言ってくれない限り。
オレは死ねない。そして文句も言えない。

じゃあオレは不幸か?
それは違う。
むしろ誰よりも恵まれている。
親に頼んでできないことは、ほぼない。
大喧嘩になることも、ほぼない。
オレが喧嘩をふっかけない限り。
お金も言うほど困らない。
オレ自体が趣味にお金を割かないからだろうけど。
なにより。
オレ自身、こうやっていろんなことを考えられる。
触れられる。感じられる。
世界を好きだと心から思える。
十分幸せだ。


そんな中で。
家族以外からのコメントをもらうとき、新鮮に思える。
自分が「従うしかない」と思っていたことですら。
あっさり覆される。
というか。
歯向かう理由が自分にない、と言った方が正解なんだろうか。
そんな中で無意識に諦めていたことを、易々と払いのけられる。
嬉しい半面、不安になる。
オレは家族を否定したいんじゃない。
かといってその人を否定したいわけでもない。
自分が諦めさえすれば解決できた問題が、複雑に絡み合っていく。
他人に関わらない方がいい、
その方が他人のためでも家族のためにもなる、と。
改めて思ってしまうほどに。

葛藤、だろうか。
泣きそうになってる。
でも、不思議と嫌な気持ちはない。
そっと、思うような。そんな気分だ。
身を捧げる、と言った方がいいかもしれない。
そしてなにより。
そんな気持ちのとき。
何かに頭を触られてる気がする。
哀れみを含むような。そんな感じ。
でも決して、否定はせず。
ただそっと、そこに何かがいる。

オレは。
どうしたいんだろう。
なんなんだろう。
よく、分からない。

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