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理想の存在


ピン、と。
突き立てられた刃の先端。
突き刺さりそうなほど鋭い目。
雄々しく。
凛とした。
神。

大人になんかなりたくない。
理由を言わずに常識を押し付ける。
自分ができもしないことを、
まるで自分はできるかのように他人を叱る。
人を馬鹿にする。
だから自分だけの目標を持った。
自分だけの理想を持った。
存在として、その理想を認識した当時、
オレは17だった。

その背中は偉大過ぎて、自ら触れることすら怖かった。
その存在の言葉を聞いて。
自分の心が抉られていく感覚そのものが。
幸せだった。
話せること。理解できること。
疑問や不安をかき消してくれる。
感謝してもしきれず、憧れるには遠過ぎる。
そして何より、その存在自身が。
自分が本当の意味で存在するべきではないと、
自らを恨んでいる。昔も今も。

オレは貴方にはなれない。
理想の自分には、一生なれない。
今のオレは、まだ貴方にはなれていないから、
それ自体を悲しいとは感じる。
でも、もし貴方になれたなら。
きっとその刃で自分の喉を突き刺す。
それに、貴方はオレ自体を殺すことも考えている。
貴方を肯定するオレを。

誰だったか。
それを怯えだと、言っていた。
やる前から決めつけている負け犬だと。
オレは、そうは思っていない。
深く考えた末の答えだと、オレは思う。
でも。
どうしてだろう。
昔ほど、オレは貴方を怖いと思わなくなってしまった。
貴方の殺意を感じられなくなった。
何か、変化でもありましたか。


オレ自身を殺す努力をしてるんだ。
悪いか。


突き立てていた剣を肩にのせて、
さっきの鋭い目はどこへやら、
ニヤニヤしている。
イタズラ好きの子供のよう。

ぶっ。
サーセン。
愛してます。主。

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